ブログ

エンディングノートが見つかった夜
~「もっと早く話しておけばよかった」その後悔を減らすために~

「もっと早く見つかっていれば……」

お葬式のお手伝いをしていると、ご家族から時折そんな言葉を聞くことがあります。

それは祭壇のことではありません。

お料理のことでもありません。

費用のことでもありません。

もっと根本的なことです。

「本当はどうしてほしかったのだろう」

「私たちは故人の希望どおりにできただろうか」

「これで良かったのだろうか」

という気持ちです。

私たち白香苑は久留米で長年お葬式のお手伝いをしています。

その中で強く感じることがあります。

お葬式で一番大きな後悔は、お葬式の内容そのものではなく、「知らなかったこと」から生まれることが多いということです。

祭壇の大きさに後悔される方はあまりいらっしゃいません。

しかし、

「お父さんは本当はどう思っていたのだろう」

「お母さんはどんなお別れを望んでいたのだろう」

という後悔は、意外なほど多いのです。

今回お話しするのは、実際にあった出来事をもとにしたお話です。

個人が特定されないよう内容を一部変更していますが、本質は変えていません。

もし今、ご両親がお元気なら。

もしご自身が終活について少しでも考えたことがあるなら。

ぜひ最後まで読んでみてください。

きっと何かの参考になると思います。



病院からの一本の電話


その日、ご家族からご連絡をいただいたのは早朝でした。

病院でお亡くなりになられたとのことでした。

ご家族は悲しみの中にいました。

しかし現実は待ってくれません。

病院からは搬送先を聞かれます。

親族への連絡もしなければなりません。

葬儀社も決めなければなりません。

死亡届の手続きもあります。

多くの方がそうですが、この時点では冷静な判断ができません。

それも当然です。

人生で何度も経験することではないからです。

私たちはまずご自宅へのご搬送を行い、その後お打ち合わせをさせていただきました。

お話を聞いていると、ご家族は故人様への深い愛情を持たれていることが伝わってきました。

「できるだけ悔いのないように送りたい」

そのお気持ちが強く感じられました。



故人様はどんな方だったのか


打ち合わせの中で、私たちは必ずお聞きすることがあります。

「どんな方でしたか?」

です。

なぜなら、お葬式は亡くなった後の儀式ではなく、その人らしさを表現する時間だと考えているからです。

ご家族はたくさんのお話をしてくださいました。

温厚な人だった。

怒ったところをほとんど見たことがない。

人付き合いを大切にする人だった。

地域活動にも熱心だった。

困っている人がいると放っておけない。

そして何より、

「家族が大好きな人だった」

そうです。

話しているご家族の表情からも、そのことが伝わってきました。

きっと多くの人に愛された人生だったのでしょう。

お葬式の打ち合わせは、単に段取りを決めるだけではありません。

故人様がどんな人生を歩まれたのかを知る時間でもあります。

私たちはこの時間をとても大切にしています。



家族葬という選択


ご家族が選ばれたのは家族葬でした。

最近では久留米でも家族葬を希望される方が増えています。

昔のように大勢の方を招いて行うお葬式だけが選択肢ではなくなりました。

家族だけでゆっくり送りたい。

親しい方だけで見送りたい。

故人との最後の時間を大切にしたい。

そう考える方が増えています。

このご家族もそうでした。

派手なことはしない。

身近な人たちで送る。

それが故人様らしいと考えられたのです。

実際にお話を聞いていると、故人様も豪華さや形式を重んじる方ではなかったようです。

だからこそ、ご家族は故人様らしい送り方として家族葬を選ばれました。



お通夜で流れた温かな時間


お通夜当日。

会館には親族や親しい方々が集まりました。

祭壇の前では思い出話が尽きません。

「あの時、本当に助けてもらった」

「いつも気にかけてくれた」

「また会いたかった」

涙もありました。

笑顔もありました。

それは悲しみだけではない時間でした。

人生を振り返る時間。

感謝を伝える時間。

故人様がどれだけ多くの人に愛されていたのかを確認する時間でした。

ご家族も少し安心されたようでした。

「いいお通夜になりましたね」

そんな言葉も聞かれました。

私たちも、良いお別れの時間になったと思っていました。

しかし、その夜に一つの出来事が起こります。



深夜の片付け


お通夜を終えて帰宅したご家族。

故人様のお部屋を少し整理しようという話になりました。

そこには長年暮らした痕跡が残っています。

読みかけの本。

使い慣れた眼鏡。

手帳。

写真。

どれを見ても故人様を思い出します。

そんな中、お孫さんが机の引き出しから一冊のノートを見つけました。

見慣れないノートでした。

表紙には大きく、

「エンディングノート」

と書かれていました。



一瞬で変わった空気


お孫さんはページをめくりました。

すると葬儀についての項目がありました。

そこには、

「家族葬希望」

「なるべく知らせないでください」

と書かれていました。

その瞬間、お孫さんの心に不安が走ります。

なぜなら、お通夜には親しい方々が来ていたからです。

故人様の友人もいました。

地域の方もいました。

「おじいちゃんは本当は嫌だったのではないか」

「私たちは間違ったことをしてしまったのではないか」

そう思ってしまったのです。

その夜、お孫さんはほとんど眠れなかったそうです。

故人様への想いが強いからこそ、自分たちの判断が間違っていたのではないかと悩まれたのでしょう。



翌朝の相談


翌朝、お孫さんが私たちのところへ来られました。

そして静かに言われました。

「私たちは間違えたのでしょうか」

その表情はとても苦しそうでした。

大好きなおじいちゃんだったからこそです。

想いを大切にしたかった。

後悔したくなかった。

だからこそ、自分たちを責めてしまったのです。

私たちはすぐに答えを出しませんでした。

なぜなら、本当に大切なのはエンディングノートに書いてある文字ではなく、その背景にある想いだからです。



エンディングノートに書いてあることが全てなのか


ここで皆様に考えていただきたいことがあります。

エンディングノートに

「家族葬」

と書いてあったら、

その意味は一つでしょうか。

実は違います。

ある人は、

「家族だけで送ってほしい」

という意味で書きます。

ある人は、

「お金をかけなくていい」

という意味で書きます。

ある人は、

「盛大な葬儀は恥ずかしい」

という意味で書きます。

同じ言葉でも意味は違うのです。

これは家族葬だけではありません。

「簡素にしてほしい」

「お花をたくさん飾ってほしい」

「知らせなくていい」

どの言葉にも、その人なりの意味があります。

だからこそ、言葉だけでは本当の想いはわからないのです。



私たちがご家族に聞いたこと


私たちはご家族に聞きました。

「故人様はどんな方でしたか」

すると、次々に思い出が出てきました。

友人を大切にする人だった。

地域の活動を頑張っていた。

誰かが困ると助けていた。

お世話になった人を忘れない人だった。

その話を聞いていると、

どうしても

「誰にも知らせるな」

という人物像には見えませんでした。

むしろ、

「みんなに迷惑をかけたくない」

という人だったように感じられました。



本当に伝えたかったこと


私たちは思うのです。

故人様が本当に伝えたかったことは、

「誰にも知らせるな」

ではなく、

「大げさなことはしなくていい」

だったのではないでしょうか。

「家族に負担をかけたくない」

だったのではないでしょうか。

「お金を使わせたくない」

だったのではないでしょうか。

人生は一行では表現できません。

人の想いはもっと複雑です。

だからこそ、エンディングノートだけで判断することはできないのです。



エンディングノートを書いただけで安心していませんか?


最近は終活という言葉が広まり、エンディングノートを書く方も増えています。

それはとても良いことです。

しかし私たちは時々思います。

そのノート、ご家族はご存じですか?

どこに保管しているか伝えていますか?

なぜそう書いたのか話したことがありますか?

実はエンディングノートが見つからないというケースも珍しくありません。

大切にしまい過ぎて、ご家族が存在すら知らないこともあります。

また見つかったとしても、内容の解釈に悩むこともあります。

今回のご家族のようにです。

だからこそ、エンディングノートは書くだけではなく、伝えることが大切なのです。



ご家族は意外と気を遣っています


ご本人は、

「そんな話をしたら心配をかける」

と思われるかもしれません。

しかしご家族も同じです。

「まだ元気だから聞きにくい」

「縁起が悪いと思われるかもしれない」

「嫌な思いをさせたくない」

そう考えています。

つまり、お互いが気を遣っているのです。

その結果、一番大切な話ができないまま時間だけが過ぎていきます。

しかし事前に話ができていたご家族ほど、お葬式の時に迷いが少ないのです。



事前相談が本当に大切な理由


白香苑では事前相談をおすすめしています。

しかし、それは契約をいただくためではありません。

事前相談の本当の価値は、

家族で話し合う機会を作ること

にあります。

相談をすると、

家族葬とは何か。

一般葬とは何か。

費用はどれくらいか。

どんな送り方があるのか。

そうした話になります。

すると自然と、

「私はこう思う」

「実はこうしてほしい」

という会話が生まれます。

その会話こそが、ご家族を救うのです。



私たちが見てきた後悔


今までたくさんのお葬式をお手伝いしてきました。

その中で感じることがあります。

後悔の多くは、

準備不足ではなく

対話不足

から生まれます。

話していればわかったこと。

聞いていれば理解できたこと。

それが亡くなった後に見つかる。

だから苦しくなるのです。



ご家族が最後に言われた言葉


故人様の人生を振り返りながら、ご家族で何度も話し合われました。

そして最後にお孫さんが言われました。

「おじいちゃんの想いを無視していたわけじゃなかったんですね」

その表情は少し穏やかになっていました。

私たちも安心しました。

完璧なお葬式はありません。

100点のお葬式もありません。

しかし、その人を想って選んだ答えなら、それは間違いではないと思うのです。



最後に


もしこの記事を読まれている方のご両親がお元気なら。

もしご自身がお元気なら。

ぜひ一度だけ話してみてください。

「もしもの時、どうしたい?」

たったそれだけです。

最初は照れくさいかもしれません。

でも、その会話は必ず未来のご家族を助けます。

エンディングノートも大切です。

事前相談も大切です。

しかし何より大切なのは、

想いを伝えること。

話し合うこと。

理解し合うこと。

です。

エンディングノートが見つかった夜。

私たちは改めてそのことを教えていただきました。

白香苑はこれからも、後悔を少しでも減らすためのお手伝いを続けてまいります。

そして、この記事が皆様のご家族にとって、未来について話す小さなきっかけになれば幸いです。

----------------------------------------------------------------------

「まちの小さなお葬式」白香苑

住所:福岡県久留米市大善寺町宮本1501

----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG